※月永と作詞家の世界線が付き合ったら
※Twitterで彼女が他担選手権してアンケートした結果月永になりました


昼の部が終わって軽食を摘みながらふと夜の部にあいつがくるのを思い出した。そう紆余曲折の末にやっと『お付き合い』が始まったあいつ!!
今でも本当におれのこと好き?と問いただしたくなるほどだ。つまり、そう今のところ素直な愛情はあまり感じられない。

「明日ね、瀬名泉くんのライブ行くんだ〜」
「知ってる!あとセナのライブじゃなくて事務所合同ライブな。ついでに教えてやるけどKnightsで出るぞ、お姫様」

こんなやりとりを昨日の夕方ぐらいにしたのを覚えている。
彼氏も出るライブの把握の仕方がおかしいって思うのはおれだけ?あいつはおれのソロライブに申し込みすらしていなかった過去があるので本当にセナ単推しってやつでセナの情報しか追ってない。
ちなみにソロライブの日は普通に関係者席に呼びつけたがあまり見ないようにしてた。だからどんな顔でおれを見ていたかは知らない。いや、だって流石にこわいだろ!?めちゃくちゃ好きな子が無表情だったら!!

回想も終わり、時計を見れば十四時を回ったところだった。グッズの交換がどうとか言ってたしもう来てんのかな。そんな気軽な気持ちでトークアプリを開く。便利なスタンプ一個をポンと送る。どこ?と可愛く目をうるうるさせているライオンのスタンプだ。これはあいつが「なんか月永さんみたい。瀬名泉くんに叱られている時のぶりっ子顔」とまだ付き合ってない時に言われて軽率に課金したスタンプである。しかし、本人は覚えていないようだ。
すぐに既読がついて着いてるよ〜、とご機嫌の様子だ。
この浮かれぽんちはこの後すぐに爆弾を落としてきた。

「!!」

余程浮かれているのだろう。
普段は送ってくれない自撮りの写真が目に飛び込んできた。可愛く上から撮られていてのセナのぬいぐるみが頬に寄り添っている。しかもなんか変な服を着ているぬいぐるみ!なんだこれ!さらに後ろにはセナの缶バッジがびっしり着いた鞄。ヘアメイクにも行ったのだろう。水色のリボンが編み込まれている。しっかりセナを意識した服装に……待って!メリケンサックみたいになってる指にセナのリングライトしかはまってない!え!!

「なんで!?」
「うるさ……。急に大きい声出さないでよ!」

時が止まったような感覚に震えまでやってきた。浮かれぽんち過ぎて可愛いけどさあ!

「あ〜!も〜!セナのせいだぞ!おかしいだろ!おれたちもしかしてまだ付き合ってない!?一個もおれのグッズ持ってないって……なんで!?」
「はあ?」

ジタジタ暴れるおれを言葉とは裏腹に心配そうに覗き込むセナ……。なんだかんだ優しいやつだし綺麗だし努力家だしファンになっちゃうのもわかる!おれもセナ大好き!じゃなくて!

「うが〜!セナのばかあほどじ〜!!」
「はいはい、あんたが元気ってこととボキャブラリーが死ぬほどないのを再認識した」
「れおくん、さっきからどうしたの?もしかして……お腹減っちゃったとかかしら?ほら、お菓子あるわよォ。司ちゃんが全部食べちゃう前に欲しいのは避けておいたら?」

おれはナルの方に這いずって画面を見せた。リッツは寝てるしもうおれにはナルしかいない。

「ナル〜……これ!どう思う!?」
「あら可愛い!泉ちゃんのファンだっけ?愛ねェ」
「うう……こんな仕打ち耐えられない」

まあまあ、と宥められながらお菓子を口元に運ばれる。美味しい。
しかも不幸は重なるものであいつの席はこっちからも良く見えるところだったはず。セナの方ばっかり見てるであろう自分の彼女が視界に入りながらライブするのってどんな気分だ!?逆にインスピレーションが沸く!

「ほらほら、いい加減支度しちゃいましょ」

ナルの声は完全に面白がっていた。




本番を迎えてステージに飛び出せばしっかりとセナを見てるはずのあいつと目が合う。絶対合うことがないと思っていたのでしっかり驚いてしまう。あいつは頑張れ〜とでも言いたげに小さくオレンジと水色のペンライトを振っている。それが合図みたいに体の内側が沸騰しそうになるような感じがした。良く見れば一個ではあるがオレンジに光るリングライトだって見える。

「よかったじゃん」

そうセナにこっそり言われて思わず肩を組みそうになったけどすごい顔されたから思いとどまった。

「目を離すなよ、お姫様!」

会場にそう声を掛ければたくさんの声援が返ってくる。全てが幸せだ。
帰宅してから特大のハグをしたら死ぬほど怒られたけど。……いやなんで!?